運動でアンチエイジング

体内の各器官の機能や、様々なホルモンの分泌、皮膚の弾性、毛髪の量、骨密度、基礎代謝などは年齢とともに低下します。毎日の食生活、運動不足の積み重ねによって体にそれらの変化が現れてきます。特に、肥満は見た目のイメージダウンばかりか高血圧、糖尿病、脳血管障害(脳梗塞が多い)など生活習慣病の元凶であり寿命を縮める要因となります。運動習慣はアンチエイジングにもっとも重要なことで、運動によって肥満の解消につながり、生活習慣病の予防、さらには若々しい体を維持させます。また、長寿社会において介護を受ける人々が増加しています。おおよそ半数の方々は脳梗塞による身体麻痺と脳血管性痴呆ですが、残りの半数の方々は加齢と筋力低下による生活機能が低下したためです。こうした背景を踏まえ国や、地方自治体でも介護メニューの中に筋力トレーニングを積極的に取り入れています。

ここでは、アンチエイジングという観点から肥満の解消と筋力維持のための運動の効用について述べます。

体脂肪と聞くといかにも不健康の代名詞に聞こえますが、脂肪そのものは生命活動のエネルギーですので、人間にとって不可欠な栄養源です。しかし、これが腹部内臓周囲と皮下に、必要以上に蓄積されると、生活習慣病の元凶として嫌われます。

では何故、脂肪は必要以上に蓄積されるのでしょうか。人間の体は大変上手く出来ており体に入った余分なエネルギーはひた貯めようとする仕組みになっているのです。これは、文明以前の時代から原始生活の中で進化した機能です。人間のみならず生物の歴史は飢えとの戦いです。食物な豊富な時代は種は保存され繁栄します。食物がなくなれば絶滅の危機を向えます。このように、数十万年にわたる人類の進化のなかで、生存のため体に入ったエネルギーはひたすら脂肪という形で貯めこうむように適応して来たわけです。われわれ人類が4度の氷河期を生き抜いたのも、この仕組みのおかげです。今のように炭水化物や動物性脂肪が豊富な時代は、人間とってはここ100年くらいでしょうか(それもごく一部の国であり多くの国の人々は未だ飢えに苦しんでいます)。食物の取り合いから、村同士さらには国同士の争いが起こります。そして、人々が産業を発展させ食べるものに満ち足りた国を作ろうとエネルギー(石油)を取り合いするため国際紛争が起こります。食物であれ石油であれエネルギーの供給と消費のバランスが正常ならば肥満にならない筈です(戦争も起こりませんね)。

肥満を解消させるには、エネルギー消費(基礎代謝と運動によるもの)を増やし栄養摂取を減らすことです。しかし、急に激しい運動をしたり、食事を単に量的に減らしたりしただけでは、かえって健康を害することもありますから、科学的な知識に基づいたダイエットと運動を行うことが必要です。

肥満とは?

以下に肥満の判定基準をしめします。BMI(体重量指数)、体重kg÷身長m÷身長m)=22が最も健康であることがわかりました。そこで、標準体重(Kg)は身長(m)×身長(m)×22で割り出します。つまり、身長165 cmの人は、1.65×1.65×22=59.9 kg が標準体重です。

減量するためのコツ

まず、運動と平行しダイエットを長く続けて行うことが重要です。例えば、脂肪を燃やして3Kg減量させるには21,000 kcalのエネルギーの消費が必要です。例えば30日間で3kgやせるためには1日700 kcal消費しなければなりません。700 kcalは10kmのジョギングでようやく消費されるカロリーです(大変ですね)。ただ、“ざるそば”は375kcalですから、5Kcalのジョギングによるエネルギー消費に相応するカロリー摂取です。たかが“ざるそば”といえども侮れません。フルマラソンにおいて約2時間半で走破しても(ごく一部のトップランナーの話ですが)2400Kcalのエネルギー消費しかなりません。したがって、生体のエネルギー収支を長期的に負のバランスにしなければ、減量にはつながらないことを理解してください。だから、ダイエットが重要なのです。

ダイエットのポイントは?

1)摂取カロリー制限;標準体重×22-25kcal程度に制限します。特に動物性脂肪を制限し、蛋白質は十分に取る必要があります。その意味で、低脂肪であるの植物性タンパクの摂取が大切です。減らしていいのは総カロリーだけです。タンパク質、ビタミン、ミネラル等の栄養素が不足してはいけません。ご飯主体だけで脂肪と蛋白質を極力制限するダイエット方法など、各個人の成功体験からの・・・・式ダイエットという本が、巷にあふれていますが、健全で効果的なダイエットの基本は“低エネルギーバランス食”です。

2)タンパク質を多めに;筋肉や内臓・皮膚・髪・血液などのほとんどが、タンパク質でできていることからもわかるように、タンパク質体を維持するうえで最も欠かせない大切な栄養素です。健康的な体や美しい肌、丈夫な筋肉と骨をつくるためにも、十分なタンパク質をとることが必要です。タンパク質摂取は体重×1.5~2gが目安です。アスリートや日常的に運動量の多い人は、体重×2.5~3.0kg以上が必要です。

アミノ酸はタンパク質の構成成分(アミノ酸が50個以上繋がると蛋白質と呼ぶ)で20種類あります。そのうち、多くのアミノ酸が肝臓で分解されるのに対して筋肉内で分解されるアミノ酸は次の6種類です。分枝鎖アミノ酸(BCAA=バリン、ロイシン、アイソロイシンという3つのアミノ酸)とアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸です。BCAAは運動によって分解が促進されます。したがって、BCAAは運動後に筋肉の合成のために摂取したいアミノ酸です。ところが、BCAAが多く含まれる食物はありません。必須アミノ酸とは3種類のBCAAに加え、トリプトファン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、スレオニン、ヒスチジンという6種類のアミノ酸は体内では合成できないので、食物から摂取しなければなりません。これらの9種類のアミノ酸を必須アミノ酸と呼んでいます(現在では、体内で合成できるが子供と幼児には必須であるアルギニンを加えて、10種類を必須アミノ酸としています)。アミノ酸は動物性食物に多く含まれますが、農産物からのほうが良質のアミノ酸が多く含まれています。タンパク質を多く摂取しようとすると、どうしても肉を食べることになりますが、その際には脂肪の摂取も増加してしまいます。タンパク質を摂取して運動で脂肪を取り除くのが肝心です。

3)野菜とビタミンをたっぷり;野菜は低カロリーのうえ、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。ビタミンやミネラルは、カラダの働きを整え、タンパク質・脂質・糖質を体の中でエネルギーに変えるのに役立つ栄養素です。一方、食物繊維は、便通を改善し、脂肪の吸収を抑え、余分な糖分や脂肪を吸着して排泄するなどの働きもあります。体脂肪を燃焼するには運動をするだけでなく、脂肪を燃やすのに必要な栄養素が欠かせません。まずは、ビタミンB群です。ビタミンB2は脂肪がエネルギーとして燃焼される際に火を付けるマッチのような役割を果たします。ビタミンB2が多く含まれる食品は乳製品や納豆、緑黄色野菜などです。また、B1は糖質をエネルギーに変えるときに必要です。B1は胚芽や豚肉、レバーなどに多く含まれます。さらに呼吸で取り込んだ酸素を運搬する鉄(しじみ、あさり、レバー、ひじきなどに多い)です。ダイエットから貧血にならないようにするために鉄摂取も重要です。

4)食習慣の改善:まとめ食い(朝食抜き)、ながら食い、夜食、間食、早食い、やけ食い、気晴らし食いなどは、肥満を来しやすいのです。コレステロール、中性脂肪など脂質は夜間合成されますので、夜9時以降の食物摂取は避けましょう。ゆっくりよくかんで(一口30回の咀嚼)、食事をゆっくり楽しむようにしましょう。一口ごとに箸を置くのも、食べ過ぎを防ぐ良い方法です。

5)サプリメントの効用:サプリメントとは栄養補助製品のことです。ビタミン、亜鉛、セレンなど微量元素、コエンザイムQ、α―リポ核酸などです。低エネルギーバランス食(エネルギーを糖質、脂質、蛋白質のバランスよく多種類の食品を摂取すること)を心がけていれば、不必要です。

運動療法の実際

中程度の運動『中高年者では1分間の脈拍が138-(年齢/2)程度になるような運動』を毎日最低30分から一時間おこなうとよいでしょう。運動は心肺機能、筋力をアップするほか、肥満を改善し、血糖や血圧を下げ、またHDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす効果があり生活習慣病の予防・治療に有効です。重い心臓病、腎臓病、肝臓病、関節障害などがある場合、また、熱、睡眠不足、二日酔いなど体調不良の場合に運動することは危険です。また、糖尿病・高血圧・肥満の方でも、重症の患者さんでは、運動療法の効果が期待できないばかりでなく、かえって害になります。このように方々にとっての運動は「両刃の剣」の性格を持っていますので、実行にあたっては必ず主治医あるいはスポーツトレーナーなどに相談してください。運動療法を行うときの一般的な条件は、体調が良好で、以下のような自覚症状や病気がないことが、運動を安全に行うための絶対的な条件です。これ以外の場合(例えば、軽い自覚症状がある、安静時の心電図に軽度の異常がある、血圧や血糖がかなり高いなど)には、医師に相談してください。また、以下の述べる、運動療法の条件に当てはまる場合でも、中年以降(50歳以上)の方はなるべく注意深く軽い運動を試してから、運動レベルをアップしていったほうが良いでしょう。

1.自覚症状
胸痛、動悸、息切れ、めまい、失神などがないこと
腰痛、関節痛などがないこと
2.運動を避けるべき病気
心臓病、安静時心電図異常、腎臓病、肝臓病などがないこと
関節や骨の障害がないこと
糖尿病、高血圧症、高脂血症、肥満症が軽症であること
糖尿病、高血圧症、高脂血症、肥満症の運動療法を行う具体的な条件は?
3.具体的な運動方法は?
1)あらかじめ
それまで運動をしていなかった方はいきなり運動療法を始めるのではなく、1-2週間かけて少しずつ体を動かすようにしてください。
2)運動の前後に
準備体操、整理体操は十分に行ってください。いわゆるストレッチ運動といわれる筋肉を伸ばす動作が大事です。特に関節あたりは入念に動かしてください。最低でも10分間以上入念に行ってください。
3)運動の種類
しっかりと呼吸しながらなるべく全身を使う運動、たとえば、歩行、ジョギング、なわとび、水中歩行、水泳、サイクリング、エアロビクスなど有酸素運動が良いでしょう。なかでも、早歩き(ウオーキング)はいつでも、どこでも、ひとりでも、簡単に比較的安全に(交通には十分注意してください)できる運動として、運動を始める際に理想的なものです。
ウオーキング、ジョギングする場合には
適当な靴(クッション性があり柔らかい)と吸湿性の服装。ジョギングまでする方はジョギングシューズを専門店で購入したほうが、膝、関節障害の予防によいでしょう。
胸を張り、背筋を伸ばす
腹を引き締める
膝、脚を伸ばす
つま先で地面をける
着地はかかとから、歩行はリズミカルに
歩幅はいつもより広めに
などに留意してください。有酸素運動を最低でも30分、うっすらと汗ばむくらいの強度で行ってください。なお、息を止め、力むような運動(ダンベル重量挙げ、エキスパンダー、ブルワーカーなど筋力トレーニング)は少なくとも運動療法の初期には好ましくありません。このような運動は血圧を上げるので、高血圧の方にはおすすめできません。しかし、有酸素運動で脂肪が燃えた後に筋力トレーニング行うと、脂肪の変わりに筋肉が付いてきて、美しい体にすることができます。運動習慣の無かった人が、筋力トレーニングを急に始めると、“肉離れ”、をおこすことがありますので、初めは軽重量(2~3kg)のダンベルトレーニングから入るとよいでしょう。よく、ダイエットを開始すると2Kg程度の体重減少は2週間くらいで認められますが、それは体水分の現象によるもので脂肪の減少によるものではありません
4)運動の強さ
“最高にきつい(これ以上は不可能)運動”を100%とした場合、成人病の予防・治療のためには50-60%程度の運動が良いと考えられています。“きつい運動”より、“楽な~ちょっときつい”運動が長時間が脂肪の消費には適しています。時間の取れない人は、駅まで歩く、一駅歩く、バス、タクシーに乗らないをモットーに毎日を過ごすことで代用できます。毎日の一時間の歩行でも、見違えるほどすっきりした体になってきます。
1.心拍数(脈拍)による判断法
腕時計式の脈拍計も市販されています。138-(年齢/2)で、推定してください。例えば56歳の人の目標心拍数は138-56÷2=110/分です。
5)運動の時期と時間
 一般に空腹時や食直後を避け、食後1-2時間に行うのが良いでしょう。  一回の運動時間は10分程度からはじめ、なるべく30分以上行うようにしましょう。  週に2回以上、なるべく3回以上行いましょう。  歩数でいうと、1日に一万歩以上必要です。
6)フィットネスジム
トレーニングジム、スイミングプールなどの施設があり、健康のためのメニューが提供されている場所です。アメリカでは1960年代以降に、わが国では1980年以降に多くのフィットネスクラブが開設されました。これは、週休2日に伴う余暇時間の増加、所得の増加、健康意識の高まりによるものです。近所にフィットネスジムがあれば、ここに通うのも良いでしょう。他人同士皆で行うことよりモチベーションの維持ができます。インストラクターによって、無理のないパーソナルトレーニングを組んでいただけることも可能です。生活習慣病予防、肥満解消のプログラムもあります。

終わりに

運動は長く続けて初めて効果がでてきます。糖尿病や肥満症の場合でも、運動の目的は、必ずしも毎回の運動で直接ぶどう糖や脂肪を燃やすことではありません。長期的な運動で筋肉量や筋肉を流れる血液の量を増やし、またその他全身の細胞を活性化することでエネルギー消費を円滑にすることが目的です。この意味でも、長く続けることのできる無理のない、気楽な運動をすることを心がけてください。